デジタル田園都市国家構想にRPAは活かせる?概要をわかりやすく解説!
目次
デジタル田園都市国家構想は、現代のテクノロジーを駆使して地方の発展を図るための国の施策です。実はこれまで多くの自治体において、このデジタル田園都市国家構想実現のためにRPAが活用されてきました。そこで今回はデジタル田園都市国家構想の概要とともに、RPAの活かし方や実際の導入事例を解説します。
デジタル田園都市国家構想とは
デジタル田園都市国家構想とは、地方創生のための施策のひとつです。2021年に発表され、2022年に閣議決定しました。地方がそれぞれ持つ魅力を生かしながら、社会課題を解決しより活性化することが目的です。
なかでも都市部と比較したときの地方の格差、地方にある不便・不安・不利を、「デジタル化」によって解決することを目指しています。国が目指す方向性やモデルを提示し、地方が主体となって各取り組みを行っていくかたちで進められています。
政府は、本構想を元にデジタル実装に取り組む自治体数を2024年度までに1,000団体、2027年度までに1,500団体まで拡大することを目標として掲げました。
国が示すデジタル田園都市国家構想の方向性
デジタル田園都市国家構想の方向性として国はどのような方針を掲げているのでしょうか。その方向性は大きく、「仕事をつくる」「人の流れをつくる」「結婚・出産・子育ての希望をかなえる」「魅力的な地域をつくる」の4つに分類できます。それぞれについて詳しく解説しましょう。
仕事をつくる
地方の活性化を図るためには、新たな雇用の創出が重要です。人材や知識を流出させず、地域内で活かせる雇用の場をつくることで、自力で利益を生み出せる地域を目指します。
国ではデジタル田園都市国家構想を通して、ICT技術を活用し、その地域ならではの産業の育成や起業支援を推進しています。
【主な施策例】
農業分野の業務支援
農業分野では、データ分析を活用した農作物の生産管理や効率的な農業経営の支援が行われている。例えば、センサーやモニタリングシステムを活用して土壌の状態や作物の成長データを収集し、農家に適切な栽培アドバイスを提供。 |
RPAツールは、中小企業のDX化支援や農業分野におけるデータ分析の効率化により、雇用を最適化させる目的で活用されています。
人の流れをつくる
地方の人口減少を食い止めるためには、都会への流出を防ぐとともに、都会から地方への流入を増やす必要があります。
このためにデジタル田園都市国家構想を通して、地域の魅力を発信するためのデジタルマーケティングや地域イベントの情報発信、サテライトキャンパスやオフィスの設置などが期待されています。
【主な施策例】
関係人口拡大のための相談窓口設置
移住でも観光でもない形で、地域と継続的に関わり支える「関係人口」層に向けた相談窓口を設置し、地域の行事や活動に関する情報発信を行う。 |
この目的でRPAツールが活用されることはあまりありません。しかしRPAによる業務効率化で浮いた人的工数を最適な場所に再配置することで、人の流れをつくるための業務に割く時間の増加につながります。
結婚・出産・子育ての希望をかなえる
地方と都市部のギャップのなかでも、結婚・出産・子育てにおける格差を埋めることは、地域の活性化に重要な意味をもたらします。
デジタル田園都市国家構想では、ICT(情報通信技術)を活用することで、オフラインでの相談や手続きへの対応など、子育て世代や若い世代の女性が働きやすい環境づくりを進めています。
【主な施策例】
オンライン子育て支援プログラム
地域の専門家や保育士によるオンラインセミナーや相談会を提供し、子育てに関する情報やアドバイスを提供。また、オンライン上での子育て情報の共有や交流の場を提供することで、地域内外の子育て世代のつながりを促進。 |
ここでのRPAツールは、その導入により定型業務の自動化をすることで、人が行うべき業務量を削減し、産休・育休を取得しやすい職場づくりに寄与しています。
魅力的な地域をつくる
地方は、都市との格差や地方ならではの不便・不安・不利から、暮らしにくいと考えられてしまう傾向にあります。これを解消し、暮らしたいと思える魅力のある地域づくりを行うことで、人の流れや地域の活性化を図ります。
デジタル田園都市国家構想を通して、地域資源のデジタル化や観光情報の発信、地域の魅力をPRするためのウェブサイトやSNSの活用が期待されています。
【主な施策例】
地域資源のデジタル化
地方の自然や文化、歴史的な名所などの地域資源をデジタルデータとして整備し、オンライン上でアクセス可能にする。地域の観光スポットやイベント情報、特産品などをデジタルコンテンツとして発信することで、地域の魅力を広く知らせることができる。 |
RPAツールはここでも直接寄与することはありませんが、RPAによる業務効率化で人手を適切な場所に再配置できるようになることで、地域の魅力付けに割ける時間も増えると考えられるでしょう。
デジタル田園都市国家構想に伴いもらえる交付金
デジタル田園都市国家構想に取り組む地方自治体には、国から交付金が支給されます。交付金の受け取り方は、デジタル実装タイプと地方創生テレワークタイプの2つです。
※本情報は2023年6月前後の情報をもとに執筆したものです。最新の情報は各公式ページよりご確認ください。
デジタル実装タイプ
デジタル実装タイプの交付金は、地方自治体がデジタル技術の導入や活用によって地域の課題を解決したり、魅力向上を図る際の財政支援として提供されます。ハード、ソフト両面にかかった経費を一部支給する形です。
具体的には既存のモデル・サービスを活用した実装、データ連携の基盤をもとに複数サービスを組み合わせて活用した実装が対象となります。
基本は経費の1/2が、サービス利用で早期に提供開始できる場合は2/3まで補助されます。
地方創生テレワークタイプ
地域のテレワーク環境整備やリモートワークの促進を目指す地方自治体に支給される交付金です。地方創生テレワーク交付金に代わって設置されました。
具体的には、テレワークスペースの整備や高速インターネット環境の整備などが支援されますが、各地方自治体に拠点を置く既存企業だけではなく、都心企業が地方進出する場合も補助対象です。例えば都心企業用に設備を整備したり、運営した場合は最大9,000万円の補助が受けられます。
デジタル田園都市づくりにはRPAツールの導入がおすすめ
デジタル田園都市づくりにおいて、RPAツールは業務効率化や生産性の向上に効果的です。RPAとは人間が行っていたパソコン上での定型業務を自動化する技術を指します。具体的にRPAで自動化できる業務例を3つ見ていきましょう。
RPAで自動化できる業務例1:データ入力
地方自治体では、住民情報や統計データの入力作業が度々発生します。これはRPAツールを活用することで自動化可能です。入力元と出力先を指定し、該当のデータ入力に必要な手順を設定すれば、RPAツールは指定された情報に基づいてデータを自動的に入力してくれます。作業時間の削減はもちろん、ヒューマンエラーも削減できるでしょう。
RPAで自動化できる業務例2:データ集計
税収や人口動態のデータを集計する様々なデータの集計作業は地方自治体における重要な業務の一つです。しかし手作業での集計は時間がかかりミスのリスクもあります。RPAツールを使えば、データ元と集計の手順を指定することで、データの収集から集計まで自動化可能に。正確な情報を誤りなく迅速に得ることができます。
RPAで自動化できる業務例3:データ照合
住民基本台帳や税務データなど、異なるデータソースの情報を照合する作業もRPAツールで自動化できます。RPAを使って自動的にデータを照合し、一貫性のある結果を得ることで、データの整合性を確保し、誤った判断や処理を防ぐことができます。
併せて読みたい! 自治体業務にはRPAで自動化できる業務がたくさんあります。以下記事でご紹介しています。
自治体でもRPAの導入が進んでいる!自治体でもRPAが有用なワケ
自治体業務でRPAで自動化できる業務やRPA導入の壁とその解決方法について解説していきます。最後に自治体が注目するRPAツールの紹介と、その導入事例をご紹介します。RPA導入を検討中の自治体だけでなく、既にRPAを導入済の自治体の方も是非参考にしてください。
200以上の自治体がダウンロードしたRPAツール「マクロマン」は利用料完全無料!
「マクロマン」は国内のツールでは珍しい、完全無料で利用でき、無料期間や人数の制限なく利用でき、200以上の自治体にダウンロードいただいています。(2023年7月時点)
ツール利用料が完全に無料なRPAツールです。サポート体制も充実しており、初心者向け動画マニュアルや、具体的な業務の自動化前の実践練習に利用できる事例集などをご用意。
また、操作で分からないことがあった場合にユーザーに聞けるユーザーコミュニティも。別途有料サポートを利用することで、ユーザーではなく当社社員に操作方法質問や、有効活用方法をはじめとしたさまざまな相談ができます。有料サポートは必要な時だけ別途お見積り、ツールは無料のため大幅なコストカットが叶います。
マクロマンをはじめRPAツールの導入には一定の知識やインプットが必要であるため、RPAツールの導入が初めての方にとっては当社「RPA女子」による導入コンサルティングがおすすめです。
社内にRPAを扱える人材がいない場合に便利な人材派遣やリモートでのサポートも行っています。必要に応じて研修も開催しているので、サポートを受けながら将来的な内製化に向けた人材の育成もできるでしょう。
デジタル田園都市国家構想実現のためのツールとしてぜひご検討ください。
RPAツールを使った地方のデジタル化事例
実際にRPAツールが地方のデジタル化に寄与した事例をご紹介します。
岡山県津山市
岡山県津山市では、RPAツールを活用して市役所での窓口申請における市民の利便性の向上を図っています。
津山市では長期的に「住み続けたい」と感じられる地域を目指して、市民からも意見を募集しながらスマートシティ構想を進めてきました。その取り組みの一つとして、進められたのがRPAツールを利用した「行かなくてよい市役所・書かない窓口サービス」です。
もともと申請受付後の管理の仕組みが整っておらず、電子申請化によって職員の負担が増してしまうことが懸念されていました。しかし開庁時間外に対応できないなどの課題もあり、本取り組みが推進。以下の形で自動化を進めています。
⓪窓口予約サービスで来庁日時を予約
①電子申請サービスから申請データを入力/来庁して申請データを入力
➁データが管理システムに蓄積
③職員が申請内容を確認・受理
④システムを通して各種サービスの情報と連携
⑤RPAツールをもとに住基システムやその他基幹システムと照合
令和5年6月時点では、まだ実装まで至っていませんが、本サービスが完成すれば、電子申請・来庁予約ともに24時間365日時間を問わず行えるようになります。対面や電話で行っていた工程の多くを自動化できるので、職員の労働時間もより効率化できるでしょう。
※本件はデジタル実装タイプの交付金対象です。
(出典:デジタル庁「デジタル田園都市国家構想交付金デジタル実装タイプ(TYPE2/3)の活用事例」をもとにコクー株式会社が作成)
広島県三原市
広島県三原市では、新型コロナウイルス感染症予防ワクチンの接種予約にRPAツールを導入しました。
60歳以上の市民を対象とした一回目のワクチン接種では、電話とインターネットで予約を受付、しかし、高齢者の多くはインターネットでの予約を行えず、市役所では担当の課以外でも電話が鳴りやまない状態になってしまいました。結果的に窓口に直接来た多くの市民による行列ができてしまうなど、たくさんの苦情と不満を残す形に。
そこで、RPAツールを取り入れた以下の手順にすることで、高齢者でも安心なアナログ方式かつ職員側の手続きも簡素化できる予約方法を実現しました。
①市役所から市民へ仮接種日を記載した手紙を郵送
➁市民から市役所へ仮接種日に接種可能か、もしくは別日程で個別接種を希望するかはがきで返答
③はがきをAI-OCRで読み取り、RPAでデータを集計
アナログでの伝達とAI-OCR×RPAツールを使った集計により、予約に関する苦情はなくなり、約38,000人いる60歳以上の市民のうち約95%が速やかにワクチン接種することができました。
(出典:内閣官房ホームページ「「アナログ×デジタル」で高齢者簡単予約とコロナワクチン迅速処理の実現」をもとにコクー株式会社が作成)
熊本県熊本市
熊本県熊本市では、地域の行政業務の効率化にRPAツールを導入し、住民情報のデータ管理や自治体の業務プロセスの自動化を行いました。
もともと申請や届け出に関して、市民目線では書類の多さやそれに伴う記入の手間が、職員目線では手入力によるミスや業務負担などが課題として挙げられていました。
そこで以下の手順で手続きの流れにRPAツールを組み込むことで、自動化に成功しています。
①住民が窓口でタブレット端末に必要情報を入力し、その情報をQRコード化したものを印刷
➁職員がQRコードの情報を読み取り、CSVデータに変換
③RPAツールがCSVデータを住記システムに自動入力
④職員がRPAツールが入力した内容をもとに最終審査し登録完了
RPAツールによって、住民の住民票の更新や手続きの確認などの業務が自動化されたことで、職員の業務負担が軽減。データの正確な管理と処理が可能になり、住民サービスの迅速な提供と誤りの軽減が実現されたことで、市民の利便性と満足度が向上しました。
(出典:内閣官房ホームページ「新たな日常におけるデジタル市役所推進事業」をもとにコクー株式会社が作成)
鹿児島県奄美市
鹿児島県奄美市では、市内で使えるプレミアム商品券、通称「ほーらしゃ券」の販売にRPAツールを導入することでサービスの質を高めることに成功しています。
ほーらしゃ券は、地域の経済活性化を目的に、活性化奄美市で住民登録者限定で販売している商品券です。
当初は一人10冊までの先着順で販売していましたが、早朝に長蛇の列ができてしまったり、本人確認や販売数の管理を潜り抜けて市民以外でも購入できるケースや重複購入できるケースが発生。また集計作業をすべて手作業で行っていたため、職員の勤務が長時間化してしまうという問題も抱えていました。
奄美市はこの課題を解決するためにAI-OCRとRPAツールの導入を決定。以下の手順でほーしゃら券の販売を行うことに決めました。
①住民はオンラインもしくは郵送によりほーしゃら券の予約を申請
➁郵送受付の内容はAI-OCRで読み取られ、オンライン受付の内容はそのままデータベースに蓄積
③RPAが蓄積されたデータを照合、重複申請がないか確認
④職員が抽選作業を実施
⑤住民に向けて抽選結果を当選はがきの形で自動出力
⑥販売店はiPad上でアプリにログインすることで予約状況・当選者情報を確認
これにより住民は早朝から並ぶことなく、24時間Web予約が可能に。また市役所職員にとっても膨大な時間がかかっていたデータ照合の時間を大幅に削減することができました。市外の人による購入や重複購入も防止でき、ほーらしゃ券の価値の向上につながっています。
(出典:内閣官房ホームページ「ほーらしゃ券販売業務のDX」をもとにコクー株式会社が作成)
山形県ICT実践人材育成協議会
山形県ICT実践人材育成協議会では、地元企業を対象に、RPAツール「マクロマン」の導入と活用方法に関する専門講座を開催しました。
もともと地域の課題として挙げられていたのが、ICTを現場で利活用できる実践的人材の不足。しかし、一般的なRPAツールの価格を考えるとせっかく研修を行っても、実際に導入まで進めるのが現実的ではないのではという声がありました。
そんななか、ライセンス料金が完全無料のRPAツール「マクロマン」であれば、現場での再現性があるのではないかという考えから、RPA女子による講座開催に至ります。
テキストによる座学パート、実際にスクリプト(シナリオ)開発を行うハンズオン形式のパートに分けて進めることで、講座の時間内でRPAツールの基本操作を理解することが可能になり、参加者のなかには実際に実業務で20分かかっていた業務を5分に短縮することができました。
福岡県大川市
福岡県大川市では、健康課の業務にRPAツール「マクロマン」を活用しています。
大川市は積極的にDX推進を進めるなかで、「マクロマン」を提供するコクー株式会社と合同会社DMM.comとの共同プロジェクトに参画することに。毎月発生する支出命令書の作成業務においてRPAツールを用いた自動化を行いました。RPA化においては、「マクロマン」の操作を一から覚えるのにはハードルがあったため、サポートサービス「RPA女子」がシナリオ制作等を行いました。
これらRPAの導入により、職員による作業時間を減らすのはもちろんのこと、普段の業務を見直す機会につながりました。
\シナリオ作成(RPA開発)のアウトソースならRPA女子にお任せください/
まとめ
デジタル田園都市国家構想を通して、地方ではICTの活用を通じた発展と地域の魅力を向上させるための取り組みが進められています。具体的な手段としてはさまざまな方法がありますが、なかでもRPAは業務の効率化や自動化に大きな効果をもたらすツールです。
RPAは直接業務量を減らすものであるため、多くの自治体が業務自動化に利用しています。「マクロマン」のような無料ではじめられるRPAツールもあるので、予算を他の部分に割きながら業務効率化を進められるでしょう。
「MACRO MANノート」では他にもRPAに関するさまざまな情報を発信しています。メリット・デメリットや具体的な導入方法など、実際の導入前にRPAについて詳しく知りたい方はぜひご覧ください。
この記事の監修者
コクー株式会社
RPA事業部 エバンジェリスト
吉田 将太
RPA事業部の立ち上げとして、営業・RPA開発・研修講師を経て、2023年1月にエバンジェリスト着任。
RPAやRPA以外の技術を使って業務効率化を目的にした様々な開発に携わる。この経験から300名以上の研修講師を務める。