RPAのリスクとは?正しく行わないと発生するリスクや発生理由、対策を解説
目次
RPAは業務効率化に役立つツールですが、その利用にはRPAならではのリスクもあります。リスクを踏まえた導入をしないと、最悪の場合には取り返しのつかない事態にもなりかねません。
そこで今回はRPAの導入・運用時に発生するリスクをその理由とともに、対策方法をご紹介します。リスク対策時に役立つフレームワークや、それでも不安な方向けのサービス紹介もしているので、ぜひ最後までご覧ください。
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RPAの導入・運用で発生しうるリスク
RPAは事前に作成されたシナリオ通りに動く特性から、正しく運用できていない場合に起こるリスクがあります。RPAの導入・運用時に発生しうる主なリスク3つをご紹介します。RPAの導入・運用を進める前にご覧いただき、未然にリスクを防ぎましょう。
意図しない処理が完了し、トラブルに発展するリスク
RPAは作成したシナリオ通りに動作するものであり、人間のように状況に合わせた臨機応変な対応はできません。そのため、以下のようなケースでは、RPAがエラーを示して処理を中断する、もしくは誤った手順で処理が最後まで完了する恐れがあります。これにより、トラブルに発展する可能性もあるでしょう。
意図しない処理が発生するケース
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野良ロボット化するリスク
野良ロボットとは、運用・保守ができる人によって管理されていないロボットの状態を指します。
RPAにより自動化した業務は、作成したシナリオによっては、物理的には日常的に人の手が入らなくても業務を完了できるようになります。しかし、開発担当者の異動や退職に伴って運用・保守を行える人がいない状態のまま放置されると、RPAツールは「野良ロボット化」する恐れがあります。野良ロボットを放置すると、処理の中断や誤った処理の完了により、場合によってはトラブルに発展するでしょう。
また、野良ロボットを復旧するには、作成したシナリオを確認し、どこに意図しない挙動があるのか原因を追及する必要があります。この原因追究作業は、新規でシナリオを作るよりも手間がかかります。新規で作成するときとの差分は以下の通りです。
新規の開発(シナリオ作成)時手順 | 野良ロボット復旧時手順 |
①通常通り、手作業時の業務手順を確認して開発 |
①手作業時の業務手順を確認したうえで、野良ロボットを動作させる前に1コマンド(シナリオを構成する部品)ごとに、どの工程で意図しない挙動がなされているかを目検で調査
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このとき、シナリオ作成の開発担当者の意図をイメージしましょう。
たとえば、手作業時の業務手順を見る限り、自動化範囲をもっと広げてよいはずのところを、一部のみの自動化にとどまっている場合は、なぜ自動化しなかったのか疑います。スキルの問題で自動化できなかっただけの場合もあれば何かのインシデント対策な可能性もあるので後者の想定で注意深く確認していくことがポイントです。
野良ロボットのなかには1から作った方が早いケースもありますが、1から作るにも、シナリオ作成時にどのような意図があって現在の仕様になっているかが分からないとリスクを検討し直す必要があります。結果的に、大幅に手間がかかってしまうでしょう。
このように、余分な工数をかけないためにも、開発者は「どのような目的で、どのように自動化したか」をまとめた設計書を残しましょう。開発担当者以外もどのようなロボットなのか理解できる状況をつくることが重要です。
機密情報やログイン情報の漏洩リスク
自動化する業務によっては、RPAは個人情報や機密データ、ログイン用のIDやパスなどの重要情報を扱います。そのため、シナリオや運用の不備により誤作動が発生した場合には、これらの重要な情報が意図せず漏洩する恐れがあります。
自動化できる範囲を増やしていくことで業務の効率化にはつながりますが、その結果、情報漏洩が発生し、その対応に追われることになっては本末転倒です。ロボットに権限を与え過ぎない、重要な箇所は人間が操作をするハーフオートメーションを目指す等を意識しながら運用を行うのほか、ID・パスワードは暗号化するなどのリスクヘッジを行いましょう。
予算面でのリスク
最後に、こういったRPAのリスクをふまえずにRPAを契約してしまい、契約期間が長いため後戻りできなくなってしまった・・・というケースもあります。完全無料RPAツール「マクロマン」なら無料で無期限利用できるので、この点のリスクを回避します。
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RPAの導入・運用でリスクが発生してしまう理由
ここまでお話したようなリスクが発生する理由を4つご紹介します。
複数のシステムをまたいだ自動化を行うため
RPAは、さまざまなシステムやWebサイト、アプリケーションなどをまたいでロボットが操作することで自動化を行います。一方で、色々とまたいで操作するからこそ、自動化したい先のシステムやWebサイト、アプリケーションの仕様の影響を受けやすく、結果的にエラーが起こりやすい環境になります。
また、セキュリティ管理が不足していると、自動化したい先のシステムやアプリケーションにも影響が及ぶことに。効率ばかりを重視せず、適切なアクセス権限の付与やツールの選定、運用をすることが大切です。
シナリオ以上の動作を行わないため
RPAは作成したシナリオ通りの作業を正確に実行してくれますが、人やAIとは異なり、状況に合わせた臨機応変な対応をすることはできず、シナリオの範囲を超えて動作することはできません。イレギュラーな事態が発生したり、連携先のシステム、ソフト、Webサイトなどの仕様が変更してしまうと処理の中断や誤った手順のままの処理がなされます。
たとえば、RPAに特定のWebサイト上での情報収集を任せたい場合、アクセスしたWebサイトの仕様変更やデザイン変更が発生すると、RPAはシナリオ通りの動作が行えなくなります。ちょっとしたレイアウトの変更や一部機能の追加などのわずかな変化であっても、シナリオと内容が異なると処理できません。ボタンの位置や認識する画像など、明らかな変化であれば原因を突き止められやすいですが、なかには、見た目には変化がないものの、実はHTMLが変更になっていたというケースもあります。サイトが深夜メンテナンスなどを行う場合も同様で、その間はシナリオ通りの処理が行えなくなってしまうでしょう。
使用するパソコンや環境の影響を受けるため
シナリオ作成時と実際にRPAを動作させるときで、パソコンのスペックやwi-fiの環境が異なると、パフォーマンスに差が出ることがあり、シナリオ作成や保守ではこれを踏まえる必要があります。2つの例をご紹介します。
パソコンのメーカーや型番が異なる場合
シナリオ作成者のパソコンとRPAを実際に操作する現場担当者のパソコンとでメーカーや型番が異なる場合、キーボード上の同じキーを押しても違う画面が表示されることがあります。しかし、この違いに気付けないまま、作成者のパソコンの仕様に合わせてシナリオ作成を進めると、いざ現場担当者のロボットを動かした際に、想定と違う挙動が行われてしまうでしょう。
wi-fi環境が異なる場合
同様にWebブラウザ上でRPAに何かの操作をさせたい場合、wi-fi環境の差によって処理の可能範囲に差が生まれます。これにより、オフィス内で作業を行う開発担当者の通信環境ではシナリオ通りに処理できたことも、例えば在宅勤務する現場担当者の通信環境ではWebブラウザが立ち上がるまで時間がかかり、シナリオがストップしてしまう可能性が。
RPAは人間のように、「Webブラウザが立ち上がった」「Webブラウザが重くて開けていない」という事を把握できないため、ブラウザが立ち上がっていない状況を把握せずにシナリオを進めようとしてしまうのです。
属人化している
野良ロボットの原因は担当者の引継ぎ不足や、そもそも担当者が設計書やマニュアルを残していないことに起因します。RPAに限らず、引継ぎが無ければ把握することはできません。
場合によっては、RPAを使いこなせなくて諦めて放置されるケースもあります。
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RPAの導入・運用時に行いたいリスク対策
運用・保守を適切に行う担当者を設置
RPAには実装後の運用・保守が必ず必要です。RPAの導入後、手順の変更が発生した際や自動化したい先のシステムやWebサイトなどの仕様・デザイン変更が発生した際に、忘れずにシナリオ更新できる担当者を設置しましょう。
併せて、それをシナリオに落とし込む工程も必須であるため、同じ担当者もしくは情シスやIT部門など、プログラミングの基礎知識があり、RPAの特性を理解している方が対応するとスムーズです。
シナリオ作成に関して社内では難しそうであれば、RPA導入支援会社やRPAベンダーへの委託を検討しましょう。対応範囲は会社によって異なりますが、業務をRPA化するための棚おろし支援から、導入支援、導入後の運用保守までワンストップで対応してくれる会社もあります。なかにはシナリオ作成や定期的な監視のみ対応可能な会社もあるので、自社の体制にマッチしたサービスを選びましょう。
作業は社内の担当者で行うものの、不明点があるときだけプロに相談するという支援の受け方も可能です。
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実際にRPAを操作する担当者の環境をふまえて開発する
シナリオ作成を行うパソコンと実際に実行するパソコンが異なるメーカーであったり、両者でwi-fi環境が異なっても問題はありませんが、シナリオの内容はRPAを普段操作する担当者の環境に合わせましょう。それぞれのパソコン上で同じキーを入力しても、違う画面になったりwi-fi速度の影響を受けてシナリオに影響するのを防ぐ目的です。
例外処理をシナリオに入れておく
エラーによる処理の中断や、誤って処理が完了してしまうケースを未然に防ぐ方法としては、以下例外処理があります。
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上記は一例ですが、このように細かく例外処理を事前に設定しておきます。
ただし、例外処理はあくまで「事前に想定されるエラーやトラブルの回避方法」に過ぎません。RPAに関する予備知識が無い場合には、想定することがそもそも難しかったり、想定外のトラブルが発生する可能性も充分にあるため、はじめはプロに外部委託してしまうのが安心です。
一度に大規模な自動化は行わない
RPAの導入段階の場合、多くの部署や人が絡む大規模な自動化は避けましょう。導入したばかりだと、どうしてもシナリオに不備が発生しやすくなります。スモールスタートしておけば、万が一、不備があった場合でも修正は一部で済むでしょう。
またシナリオが正しくても、動作環境によってはRPAがうまく動作しない可能性もあります。小規模な自動化で、想定通り実装できるか一つずつ確認しながら進めていきましょう。
管理マニュアルや設計書を作成して管理する
RPAの野良ロボットや属人化によるブラックボックス化を防止するには、「どのような目的や意図で、どのようにRPA化したか、注意事項は何か」などを記載した管理マニュアルや設計書を残しておくことが大切です。
担当者が異動や退職する可能性もあるため、担当者以外にも自動化している業務の全体像や使い方などを複数名が把握できているとよいでしょう。なお、管理マニュアルの作成は、後回しになりやすいタスクです。シナリオ作成と並行して進めていきましょう。
特にエラー発生時に迅速な復旧が必要な業務については、担当者不在のなか、ほかの従業員が対応しなくてはならない可能性もあります。こういったケースに備えて細かく手順書を作成しておけば、被害を最小限に抑えられることもあります。
同時に、そもそもRPAにはエラーで処理が中断するケースがよくあるという認識を社内で共有しておくことがポイントです。RPAでの失敗の多くはRPAに対する理解不足によるものです。
ログファイルを残しておく
上記の通り管理マニュアルや設計書の作成と併せ、RPA作成・実行をしたらログファイルを残しておきましょう。ログファイルはRPAツールに自動で保存され(RPAツールによります)、エラーが発生した際の原因解明の手掛かりになります。
属人化させない
RPAに限らず、管理業務を属人化をさせないことで、引継ぎ漏れなどを未然に防げる運用体制を構築しましょう。複数人で運用・保守を行えるよう担当者決めを行えればベストですが、難しい場合も管理マニュアルや設計書を読めば誰でも理解できる状況をつくることが重要です。
アクセス権をRPAに付与するデータを制限する
RPAは他のツールやシステムと連携し、広範囲の業務を自動化することが可能ですが、情報漏洩のリスクを考えると権限を与えすぎない方がよいでしょう。なるべく機密情報にはアクセスできないような設定や、業務に必要な最低限の情報にだけロボットのアクセスを許可しましょう。
メール作成などの自動化の場合、送信ボタンを押すなどのリカバリーできない作業はRPAには行わせず、下書き保存までにするなど、業務を細かく分割して自動化範囲を絞り込むのも回避策のひとつです。業務を細分化することで、アクセス権限の細かい設定などの手間は増えますが、重要データが漏洩した際の負担と天秤にかけて考えましょう。
RPAのリスク対策時に効果的なフレームワーク
リスク対策を考える際に役立つ、効果的なフレームワークをご紹介します。トラブルが発生してしまった際に迅速に対処し、またそもそものトラブル発生を未然に防ぐために役立てましょう。
RMF
RMFとは、「リスクマネジメントフレームワーク」の略で、組織や情報システムにおける情報セキュリティリスクの管理方法を示したものです。①リスクの特定、②リスクの分析、③リスクの評価(対応の優先順位付け)、④リスクへの対応、⑤モニタリングおよび改善のプロセスによって、リスクを事前に防ぎ、損失回避することを目指します。
RPAの導入・運用においても、このフレームワークは効果を発揮し、ご紹介してきたようなさまざまなリスクへの適切な対処に役立ちます。各フェーズはこの後、紹介する3つのフレームワークを利用しながら、進めていきましょう。
ロジックツリー
ロジックツリーとは、課題を細かく要素分解していくフレームワークです。トラブルの原因やその解決法を探るのに役立ちます。
ロジックツリーの作成時は、まずツリーの幹となる課題と要素分解する切り口をを設定し、そこから枝分かれしていく形で要素を書き出していきましょう。このとき、要素がMECE(漏れなくダブりなく)できているか意識することが大切です。分解は要素が具体的な行動に繋がるところまで続けます。
カンバン
カンバンとは、プロジェクト管理の手法です。一般的にホワイトボードに項目を書き出し、そこにカードを貼っていく形が知られています。業務の全体像が把握しやすいので、進捗遅延の把握や業務プロセスの改善に役立つでしょう。
RPAの導入・運用においては、各シナリオに対して「誰が(担当者)」「いつ(タイミング)」「どこで(部署やチーム)」「何を(対象業務)」「なぜ(理由)」「どうやって(自動化フロー)」の観点でカードを書き出していきましょう。管理マニュアルやログ作成時の活用がおすすめです。
KPT
KPTは、プロジェクトの振り返りに使われることが多い手法です。「keep(このまま続けるべき点)」「problem(問題点)」「try(今後新たに取り組みたい点)」の頭文字をとってKPTと呼ばれます。ホワイトボードなどにK・P・Tの各項目を書き、その下に各項目に当てはまるアイデアを書き出していく方法が一般的です。
RPAの導入・運用においては、K・P・Tの各項目を検討することでより効率のよいシナリオ作成につながることが期待できます。
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まとめ
RPAは開発・運用方法を誤ると、エラーによる処理の停止や誤った処理が完了してしまうことによる情報漏洩などのリスクがあります。しかし、こうしたリスクは、RPAについて正しく理解し、適切に開発を進めていけば未然に防げるものがほとんどです。安定した運用のために、RPAの担当者を設置したうえで、管理マニュアルを作成し、トラブルやエラー発生時の対応も事前に決めておきましょう。
この記事の監修者
コクー株式会社
RPA事業部 エバンジェリスト
吉田 将太
RPA事業部の立ち上げとして、営業・RPA開発・研修講師を経て、2023年1月にエバンジェリスト着任。
RPAやRPA以外の技術を使って業務効率化を目的にした様々な開発に携わる。この経験から300名以上の研修講師を務める。