現場で活躍する職人さん |
鈴木鉄工所で製作している部品 |
EDI処理
私は数年前にUターンし、父と母が経営している鈴木鉄工所に三代目の跡継ぎとして入社しました。
当社は現在、13名の小さな町工場です。当社に限らず地方の製造業においては昭和の仕事の進め方が色濃く、技術の伝承も課題で、跡を継ぎたくなるような収益状態ではないのが現状です。
当社は「ビックカンパニーよりグットカンパニー」を掲げていますが、ある程度の規模がなくては時代の流れに応えていけないと考えております。そのため、「年商が約10億円にまで成長する計画」を立てました。
現在の経営規模では、DXに取り組まなくとも企業として存続可能ですが、目標とする「年商を1億から10億に拡大」するには、仕事の可視化と仕組み化が課題でした。
限られた人材と時間を最大限に活用するため、DXに挑戦し、事務作業やサポート業務の自動化・効率化を進めることにしました。
関東からUターンし、社長であるお父様から会社を継いでいく鈴木一正さん |
手作業での仕上げなどもあり、事務作業をする時間の確保が難しい現状 |
取引先との見積もり算出やweb発注システム(EDI)に関するルーティーン作業が、日々の業務の負担となっていました。取引先からの見積依頼数が多いため、慣れていない社員が作業をすると、2時間以上かかります。
具体的な業務の流れは以下です。
1.取引先のweb発注システムにログインし、見積依頼のデータダウンロード
2.ダウンロードした見積依頼データをExcelで加工。必要な情報を抽出して、納品日ごとに同じ部品で製造の依頼数をまとめる
3.その後、再度web発注システムで部品単位での過去の受注データを検索し、ダウンロード
4.最後に、ダウンロードした過去のデータから受注価格を調べ、見積金額を算出
というものです。
取引先との案件データの整理に毎日数時間かかっていた |
職人さんが多く、事務的作業は社長の奥様が担当 |
RPA(Robotic Process Automation)という仕組みで、手作業で行っていた業務を自動化することができるとDX・IT関係者さんに教えていただきました。
改めて調べてみると高額なRPAツールもあって、費用対効果を得られるか不安を感じていました。
費用を抑えて利用できるRPAツールを探していたところ、地元のデーリー東北新聞社さんのシステム開発部がシステム導入支援を行っていることを知り、RPAツール「マクロマン」の導入を決断しました。
具体的にはRPAツール「マクロマン」を利用して、マクロマンの販売パートナーであるデーリー東北新聞社様によって
以下を自動化しました。
マクロマンの起動指示さえすれば、自動で業務が行われる為、空いた時間で他の業務を行うことができるようなりました。現場のご担当者様からは「放っておいても作業が進んでいるのでかなり楽になった」「作業工数が減った」との声もあがっています。
効果としては月間約40時間の削減になりました。
(毎日2時間の作業×月の稼働日数20日間=40時間)
今回導入いただいたRPAツール「マクロマン」 |
マクロマンを使ってRPA開発をしたデーリー東北新聞社十文字様 |
町工場のイメージを一新し、「きつい」「汚い」「危険」という3Kから、「かっこいい」「高所得」「加工屋」という新しい3Kに変革していくことを目指す鈴木鉄工所。
(1)「かっこいい」町工場を実現するために、ガレージのようなスタイリッシュなデザインの工場環境を考えています。働く人々が楽しさを感じ、誇りを持てる職場を作り上げることを目指しています。
(2)「高所得」を実現するために、仕事の仕組み化、技術向上、製品の付加価値化の創造に注力しています。
(3)「加工屋」としての地位を確立するため、顧客のニーズに柔軟に対応し、高度な加工技術や納期対応により顧客満足度を高め、町工場としての価値を向上させていきます。
将来的には、自宅にいながらの工作機械加工プログラム作成や、工作機械の遠隔操作ができるような環境を整備することで、リモートワークの体制を整えていきます。
そして、魅力ある会社への成長に向けて、ものづくりの楽しさを追求する仲間が集まってきています。技術や経験に関係なく、ものづくりに情熱を持つ人々を、当社は広く歓迎しています。
最近では、元漁師、元美容師、元銀行員などさまざまなバックボーンの人材が活躍しています。また、現場の職人として女性も入社してくれました。成長も早く、期待感や未来感で会社がキラキラしてきたと感じます。
このように新たな視点や経験を持つ多様な人材が集まることで、今までにないアイデアや意見が生まれ、町工場の可能性が広がっていくと信じています。ここに集まってくれた仲間と楽しく、長く働いていく為にも、DXを上手く活用していきたいと思っています。
鈴木鉄工所の現場を支える人材に急成長中 |
若い世代も活躍中 |
RPA「マクロマン」を活用したDXに今回取り組んでみて、中小企業ならではの経営資源の限られた状況だからこそ、DXによってヒトの可処分時間創出が大切であると痛感しました。
DXは一般的に費用がかかり、大企業が導入するものと誤解されがちですが、県内にはDX総合窓口のように相談できる場所や、「マクロマン」のように低コストで利用できる多様なツールが存在します。
中小企業ならではの柔軟性を活かし、短期間で大きな成果を上げられるDXを推進することが可能だと考えます。小さくてもいいから、まず一歩踏み出して、今までの業務を変えてみる。そうすれば世界が変わります、始めやすいところから積極的にDXに取り組んでいきましょう。